プロマネはメンバーに好かれないとプロジェクトがうまくいかないという大前提
プロジェクトマネージャーのみなさん、メンバーに好かれていますか?
この質問に自信をもってYESと言えるようになると、 あなたのプロジェクトはとてもうまく進むようになるかもしれません。
僕が実際に体験した2つのプロジェクト
僕が同時期に関与していた2つのプロジェクトで、一方は大成功、一方は大炎上したプロジェクトがあります。
1つ目は、開発プロジェクトの経験が長く、マーケティング・デザイン・エンジニアリングに精通している人がプロマネを務めたプロジェクトA。
2つ目は、営業部から開発部に異動になって、開発プロジェクトのマネジメントなんてこれまでやったことのない人がプロマネを務めたプロジェクトB。
僕も周囲の人も、プロジェクトAはスムーズに進んで、プロジェクトBは波乱が多いんだろうなとプロジェクト立ち上げ時点では考えていました。
課題山積で一向にうまく進まないプロジェクトA
プロマネは一見してとても優秀。
メンバーも最初は彼のことをとても信頼していました。
きっとこのプロジェクトはうまく行くだろうとワクワクする思いもあり、メンバーのモチベーションは当初かなり高い状態にありました。
しかし、日に日に状況は暗転します。
プロマネの言っていることは正論なのですが、上から目線でメンバーが意見を言いにくい雰囲気があり、さらには反対意見を言う人を遠ざけるような傾向がありました。
そんな状況にメンバーのモチベーションは下がり、決められたタスクを最低限こなすだけになりました。
さらに時間が経過すると、決められたタスクすらいい加減にこなすようになっていくのです。
最終的には、重要な役割を担っていた数人が別の会社に転職してしまいチームが空中分解して、目標を完遂しないままにプロジェクトはお蔵入りとなりました。
着実に課題を解決して目標を達成したプロジェクトB
一方プロジェクトBは、当初の想定より多少の機能削減とスケジュール調整はあったものの、許容される範囲で無事にプロジェクトを完了することができました。
プロマネは、開発現場のことを何も知らないのでトンチンカンなことを言うので、メンバーはげんなり。
初期のモチベーションはプロジェクトAのチームメンバーと比較してかなり低い状態でした。
しかしこちらのプロマネは、メンバーの意見をきちんと聞いてくれて一緒になって考えてくれるような人でした。
外部の利害関係者ときちんと戦ってメンバーを守ってくれたことも何度もあります。
常に営業的な発想をする彼にいろいろな文句は尽きないものの「彼の意思決定には従おう」という雰囲気が出来上がっていきました。
メンバーの団結力も高まりモチベーションは向上し、先手先手で課題を解決していく理想のライフサイクルでした。
プロジェクトAとBの違いは何なのか
第三者が、議事録などのドキュメントだけ見れば、Aプロジェクトはまともで、Bプロジェクトは適当で雑だった。
でも結果として圧倒的にうまくいったのはプロジェクトBです。
この要因を振り返って考えてみると、Aのプロマネはメンバーから嫌われていて、Bのプロマネはメンバーに好かれていたということに尽きるのではないかと思うのです。
結局のところ、好きな人には付いていくし、嫌いな人には付いて行かないという単純な人間の性質がプロジェクトマネジメントにおいても重要なんだなということを改めて感じる一件でした。
プロジェクトマネジメントのスキルや経験を軽視するわけではありませんが、それよりも前に人として魅力的な人間でなければプロジェクトマネージャーは務まらないということですね。
ダニエル・キムの成功循環モデル
これはモチベーションマネジメントの理論的にも実は合致しています。
MITの教授であるダニエル・キムが提唱したモチベーションに関する論文の中に、「成功循環モデル」とういものがあります。
モチベーションを高めてプロジェクトの結果を出し続けるためには4つのステップが必要であるという理論です。
ゴールとしての結果の質を上げるためには、それを生み出すための行動の質を上げなければいけませんが、そのためにはどういった行動をすべきか考えるという「思考の質」をあげる必要があります。
そして、思考の質を上げるために必要なのがチームメンバーの「関係の質」なのです。
この4つのプロセスは循環して成長していきますが、循環の出発点は「関係の質」であることが着目すべきポイントです。
人間関係を良いものにすることを軽視しては何も始まらないということですね。