SIPOC - プロジェクトを俯瞰して本当にやるべきことを明確にする改善ツール
頑張っているのに課題ばかりが増え続けて、なかなか成果が出ないプロジェクトに悩んでいませんか?
目の前にある課題を片っ端からつぶしていく仕事のやり方を繰り返していると、頑張れば頑張るほど課題が山積みになってしまうことがあります。
見つかった課題にひたすら対処しているその姿はあたかもモグラたたきのようで、課題を解決した瞬間の「頑張っている感」は得られますが、際限なくモグラ(課題)が頭を出してくるのでいつまでたっても状況が改善されません。
そんな状況から脱却して目に見える成果を手に入れるためには、まずプロジェクトの全体像を俯瞰しなければなりません。
俯瞰的な視点がないと、常に局所的な課題にばかりに目が行ってしまいます。
全体像を俯瞰する事で自分やそのプロジェクトが置かれている状況を客観視できて、もぐらたたき状態から脱却するきっかけをつかめるはずです。
SIPOCはプロジェクトの全体像を捉えるのにシンプルで有効なツール
もぐらたたきに夢中になっていると目の前の課題に近視眼的に取り憑かれてしまい、頑張っているという満足感も得られてしまうため余計に全体像の俯瞰ができなくなってしまいます。
そこで有効なのがSIPOCというツールです。
サイポックと読みます。
以下の5つの要素を整理することで、プロジェクトの全体像を俯瞰します。
S:Supplier(供給者)
I:Input(インプット)
P:Process(プロセス)
O:Output(アウトプット)
C:Customer(顧客)
これらを整理することで視界が広がり、プロジェクトに含まれる要素が可視化された結果、以下の効果をもたらします。
- 顧客との結びつきが確認できる
- 重要な活動から認識できる
- 細かいところで行き詰まるのを避けられる
- 一眼でプロセスの全体像を捉えられる
- 本質的な課題の解決を改善計画に結び付けられる
- 詳細な分析の焦点を必要な部分のみに絞れて、コミュニケーションの土台になる
それでは、SIPOCを活用するための具体的な手順を紹介していきましょう。
5つのプロセスでSIPOCを作成しよう
手順1.業務プロセスの境界を明らかにする
SIPOCは全体像をとらえるツールですが、対象は明確にしなければなりません。
業務プロセスという観点で、自分たちが検討の対象にすべき境界を明確にしましょう。
自分のプロジェクトの役割や、責任と権限の範囲が「暗黙の了解」的に理解したつもりになっていて、社内外の関係者間、上司、顧客などと明示的に話し合って合意していないケースが多くあります。
例えば、自分には十分な権限が与えられていないのに、上司や依頼主が丸投げでやらせようとしているケースなどはないでしょうか?
そういったケースでは、SIPOCを描いた段階でそのプロジェクトがうまく行かないことが明確になりますので早期に対策をとることができます。
何をやるべきかを明確にするということについては、以下の記事もオススメです。
業務プロセスの境界を明らかにする上でのポイントは以下の6つです。
- 業務プロセスの「呼び名」を定義する
- 活動/作業を記述する
- プロセスの全体を含める
- プロセスの開始と終了を明らかにする
- ここに定義したプロセスの全体をコントロールできるかを確認する
- 課題/問題はプロセスの領域内にあるかを確認する
手順2.プロセスのアウトプットを明確にする
手順1で定義したプロセスが、何を創るのかをリストアップしましょう。
製品やサービス、書類、情報、ソースコードなど、何かしらのアウトプットがあるはずです。
現状のアウトプットのみをリストアップし、希望的なアウトプットや将来的なアウトプットは含めないようにしましょう。
手順3.顧客とその要求(VOC / Voice of Customer)を明確にする
手順2で定義したアウトプットを受け取る人をリストアップしましょう。
外部顧客だけでなく、内部顧客(経営陣、他部門、上司、チームの他メンバーなど)も漏れなくリストアップすることが重要です。
顧客が明確になったら、プロジェクトの成果として顧客が何を求めているかを再確認します。
アウトプットと顧客を1対1で関連付けて、それぞれのアウトプットが顧客の要求を満たしているかを確認しましょう。
この時点で、顧客の要求を満たしていないアウトプットは見直し、そもそも要求が存在しないアウトプットは無駄なアウトプットとして排除することで生産性を大幅に向上できます。
なお、顧客の要求は具体的かつ定量的に定義しなければいけません。
もし具体的かつ定量的な要求がSIPOC上に書けなければ、要求の確認から再スタートするべきです。
顧客の要求を明確にするために、以下のようなことを行いましょう。
- どのように製品/サービスが使われているかを観察する
- 自分で製品を使ってみる。顧客としてサービスを受けてみる
- 顧客を調査する
- 顧客は何を入手するか?
- 顧客は何をしているか?
- 顧客にインタビューする
なお、顧客へのインタビューを行う際は、「はい」「いいえ」で答えられる質問(クローズド・クエスチョン)は使わず、より多くの情報が得られる質問(オープン・クエスチョン)を使うと効果的です。
現在の要求だけでなく、顧客、市場、現在から将来への機会(チャンス)に目を向けて、将来の要求も探るようにしましょう。
手順4.プロセスへのインプットを明確にする
業務プロセスを開始するには、必ず何らかのインプットが必要です。
プロセスのアウトプットを作る上で必要なものをリストアップしておくことで、あとから必要な資源や情報がなくて作業が止まってしまうことを防ぎましょう。
インプットは、以下の6Mを参考にして考えると抜け漏れなく洗い出すことができます。
- Man(人、人材、リソース)
- Material(材料、情報)
- Method(方法、道具)
- Measurement(測定、評価)
- Machine(機械、装置)
- Mother Nature(環境)
手順5.インプットの供給者を明確にする
1つのインプットに対しては、必ず1つの供給者がいます。
手順4で必要なインプットが明確になったら、それはどこから手に入れられるかを考えましょう。
さらに、供給者に対してどのような要求をすれば最適なインプットを提供してくれるのかもあわせて考えます。
手順3で顧客の要求が具体的且つ定量的であるべきと書きましたが、同様に供給者への要求も具体的且つ定量的である必要があります。
SIPOC図の参考例はこちら
例: SIPOC (設計業務)
例: 不動産会社用ホームページ作成会社
まとめ
業務プロセスには必ず始まりと終わりがあり、必ず前工程と後工程があります。
SIPOC図を書くことで、ビジネスの前後関係が明らかになり、プロジェクトにおいてやるべきことが明確になります。
プロジェクトの立ち上げ時はもちろん、中盤でプロジェクトに混乱の兆候が見えた際などにSIPOC図を描いて全体像を俯瞰してみてはいかがでしょうか?
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