失踪・分裂の危機を防ぐ!プロジェクトメンバーの疲弊に気づくための5つのシグナル
元気なのはあなただけかも。プロジェクトメンバーのこと、見ていますか?
プロマネやディレクターの仕事は、クライアント(または上司)とプロジェクトメンバー、その他の利害関係者の間に入ってプロジェクトをリードすることなので、関わる人が多く時間に余裕がなくなりがちです。
膨大な仕事量に忙殺されてプロジェクトメンバーの心身状態に気を配れないまま、ある日から突然メンバーが休みがちになりピンチに陥ったという苦い経験を持つプロマネも少なくないのでは?
僕が過去に疲弊させてしまったメンバーを思い返すと、5つのシグナルを事前に出していました。
プロジェクトメンバーが疲弊して窮地に追いやられる前にフォローできるよう、今ではその5つのシグナルに常に気を配るようにしています 。
シグナルその1 目が笑っていない
新プロジェクトで招集したメンバーたち。
キックオフミーティングではプロマネのオヤジギャグに爆笑が起こるなど、楽しく会話をしていたのに、プロジェクトの途中から冗談を言っても笑わなくなったメンバーが増えてきた経験はありませんか?
露骨に笑わなくなった場合はわかりやすいですが、目線がちょっと鋭くなったり、口元は笑っているのに目が笑っていなかったりすることが増えるのが最初の兆候。
これは、心に余裕をなくし始めている証拠です。
シグナルその2 ネガティブワードが減る
要件定義に時間を割いたのに、次々と仕様変更が発生すること、ありますよね。
プロマネもクライアントとうまく調整できず、変更を受け入れる日々。
この時、メンバーの心の中にはこんな声が生まれています。
「これまでつくってきたものは何だったの?」
「目的がわからないんですけど」
「バカなクライアントだ」
そうして、進捗ミーティングではプロマネへの不満が噴出!最初は渋い顔をして仕様変更を受け入れていたメンバーも、心の中の声を実際に口にするようになります。
でもここまでならまだ大丈夫。
むしろ、メンバーが不満をプロマネに言える関係性を築けているということは素晴らしいことです。
気を付けたいのは、そういった不満の声が減ったとき。不満の声は現状を改善してほしいという想いの現れですが、諦めモードに入った人は不満を言わなくなります。
シグナルその3 出社・退社時刻が微妙に変わる
過去に僕が担当したプロジェクトでも、終盤になって休みがちになる人が出てしまったものがいくつかあります。
遅刻ならまだしも、リリース直前に突然欠勤などということになると大変!
周りのメンバーの仕事量を増やすことになり、プロジェクトの雰囲気が悪くなってしまいます。
そうなってしまう前兆として、多くの場合は出社時刻が微妙に変わります。
今までは定時15分前に来ていた人が定時5分前に来るようになるなど、微妙な出社時刻の変化には要注意。
寝る前に翌日の準備をしていた人がそれをせずに寝てしまうようになっていたり、スパッと起きられていた人が憂鬱な気持ちでしばらくベッドから出られなくなっていたりするのかもしれません。
この状態が続くと、いずれ遅刻や欠勤というプロジェクトに悪影響を与える結果になります。
シグナルその4 仕事以外のことに前向きになってきた
プロジェクトの仕事は淡々とこなしているけど、こんな行動をとるようになった人がいたら要注意です。
- 社外人脈を増やすため各種交流会に頻繁に参加するようになった。
- 業界や競合についてやたら詳しくなっている。
- 新しく勉強を始めた。
これは、モチベーションが高まっている人にもあり得るのですが、疲弊してプロジェクトへの興味が薄れていたり、転職を考え始めた人にも表れる傾向です。
シグナルその5 SNSで意味深な発言が増える
TwitterやFacebookで、他のメンバーやクライアントへの批判や愚痴ともとれる内容を投稿しているメンバーはいませんか?
考えを発散する場所がなく、相談する人もいない、追いつめられて帰宅途中の電車の中で書き込んだメンバーを想像してみてください。
かなり思い詰めている状況ですよね。
それで小さなストレスを発散できているのなら良いですが、長く続く場合は注意が必要です。
また、SNS上での対象がぼやかされた批判や愚痴は、他のメンバーが「自分のことかも?」と疑心暗鬼になったり「直接言えばいいのに」といら立ってしまったりすることもあります。
こういったタイプのメンバーはいわゆるコミュ障であることが多く、直接的に意見を表に出すことが極めて苦手です。
しかし、現状を変えたいという想いは強いため、直接口に出さずに「気づいてくれたらいいな」「変わったらいいな」というある種の正義感で投稿していることが多く、周りへの影響が見えていないことがあります。
他のメンバーの反感が増えないうちに、業務命令としてそのような投稿をやめてもらうという判断もときには必要です。
疲弊シグナルが見えたら、とにかくコミュニケーションの頻度を増やそう
これらのシグナルが見えたら、とにかくコミュニケーションの頻度を増やすことが効果的です。
コミュニケーションが大切なのは言わずもがなですが、「質<量<頻度」が重要というのがコミュニケーションで意識したいポイントです。ちょっとした挨拶や雑談で構わないので、毎日何かしらのコミュニケーションをとるようにしましょう。
コミュニケーションの頻度が増えると、メンバーから相談できるきっかけが増えます。
話そうとしないメンバーに無理に話してもらおうとしても本音は出てきません。
とにかくメンバーが自発的に相談を持ちかけてくれる状況を作るようにしましょう。
コミュニケーションは直接的な会話だけとは限りません。
特に技術系のメンバーの中には、会話が苦手な人もいるはず。
そんな場合に無理に会話によるコミュニケーションをとろうとするのは逆効果です。
チャットやメールはもちろん、目があったときに笑顔を返す、メンバーのSNSに「いいね!」などのサインを送るなども立派なコミュニケーションです。
その他にも、感謝を伝える、褒める、ランチに誘う、など積極的に声をかけましょう。
仕事もプライベートもすべてを受け入れよう
メンバーの疲弊の原因は、もしかしたら仕事ではなくプライベートが原因かもしれません。
ですから、仕事に不満があると決めつけてフォローするのは要注意。
仕事の話ばかりされると、プライベートの相談がさらにしにくくなり、平行線をたどって反感を買うことも。
家庭の事情は表面に出ないことが多いですが、プライベートが仕事に及ぼす影響が大きいのは感じる人が多いはず。
彼女に振られた、昨日も旦那とケンカした、子供が高熱を出していて心配、など人によって悩みはさまざま。悩んでいるメンバーが、朝から明るく前向きに仕事でパワーを発揮できるでしょうか。
幸福な働き方の促進を支援するウィズダム・ラボのリッチ・フェルナンデスが記事でこんなことを書いています。
ストレスは人から人へ伝染するが、その逆もまた真である。つまり、チームメンバーの誰かが心身の健康(well-being)を感じていると、その効果はチーム全体に波及するようだ。
チーム(そしてあなた自身)が職場やデジタル上で仕事に従事すべき時間帯を、慎重に考えよう。そして、仕事から離れるべき時間についても同様に意識を高め、はっきりと伝えなくてはならない。
出典 :部下のストレスと燃え尽きを防ぎ、仕事の生産性を上げる方法|ハーバード・ビジネス・レビュー
「仕事にプライベートを持ち込むな」という考え方はもはや過去のもの。
仕事は仕事というドライな人間関係は短期的に見ると結果が残せてよいのですが、長期的に見た時、メンバーの疲弊は蓄積され、退職しか考えられない思考に陥るリスクが高まります。
メンバーに幸福感を持ちながら仕事に取り組めるようにすれば、退職せず長期間安定して働き続けてくれるようになります。
そうなれば、各メンバーの熟練度も高まり、チーム全体のコミュニケーションもしやすくなって、組織全体の生産性がどんどん向上していくでしょう。
おわりに
人材不足の中で優秀なスタッフを確保するのがますます難しい時代になってきました。
プロジェクトメンバーの疲弊シグナルを早くキャッチして、長く働きたいチームを創ることもプロマネの重要な役割です。
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